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倉敷市西田地区に残る古い行事で「ひゃくまんべえ」と言われるものがあります。どうやらこれは「百万遍」といわれる浄土宗から始まる在地の行事で、おそらく江戸時代から続く「虫追い」行事と思われます。今日は、私の隣村に伝わるこの行事を取材しました。 |
子供たちや地区の人々が集まって |
私は子供の頃から、隣の地区で繰り広げられているこの「なんめいど」を何回も見ていつも「何なんだろう」と不思議に思っていました。夏の初め、田植えが終わった頃に決まってあるのです。子供たちが集まって、鐘と太鼓を叩きながら「なんめいど、ちんめいど、なんめいど、ちんめいど・・・」と道という道をめぐって歩くのです。「何なんだろう??」ということで、今日は「取材」させていただきました。![]() 「じゃあ、始めましょう」組合長さんの一声で、大きな数珠が取り出されます。直径2cmくらいの玉を連ね、正面に大きな玉や飾りを持った大数珠です。周囲が12mもあるでしょうか。みんなが車座になり、その数珠につかまります。「おい、大きい僕が太鼓だ」。子供たちの2人が太鼓と鐘の役になります。「はじめ」の号令と共に「ドンドンドン・チンチンチン・ドンドンドン・チンチンチン・・・」太鼓と鐘が響き渡ります。みんなは数珠を手繰って次へ送りながら「なんめいど・ちんめいど・なんめいど・ちんめいど・・・・」と唱え続けるのです。この日はおよそ10分あまり。「もう百万遍になったかな??」。そう、数限りなく唱えるので、百万遍と言うのでしょうね。そして、公民館の外へと繰り出します。 |
地区の田んぼと家々をくまなく巡って |
「なんめいど、ちんめいど、ドンドンドン、チンチンチン・・・・」20名あまりの行列は、小学校の前を通って、用水の土手をとおり、地区内の道をくまなく巡ります。途中の家々では、お年寄りなどが出てきて、大数珠にさわり手を合わせます。 休憩を挟んでおよそ1時間、その間ずっと「なんめいど・ちんめいど・なんめいど・ちんめいど・・・」と「チンチンチン・ドンドンドン・・」が続きます。植えたばかりの稲と、地域の子供たちがみんなすくすくと育つように、願いを込めて歩くのです。 |
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今では少々簡略化しました |
この「なんめいど」、西田地区の8組合全部に残り、数珠を順番に移しながら、6月中旬から7月にかけて実施されているそうです。この日も、お隣の3番組合では11時半からでした。3番組合は農家の広い座敷を会場にして実施されたそうです。「昔は各農家が廻り持ちで宿(会場)になったのです。最近はそうもいきませんので、公民館が多いのですが。」ということでした。 この地区の周辺では、かってはいくつもこの百万遍が残っていたということですが、今では数少なくなってしまいました。あと、隣の倉敷市早高地区の一部にも残っていると聞かされました。(2006,6) ここでこの行事について、この地区の小原澄雄さんの解説を載せさせていただきます。
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「ひゃくまんべん」の名前の由来は、車座になって大きな数珠を繰りながら、
大勢で光明真言「南無阿弥陀仏」を何度も称えますので、
のべ回数にすればかなりの数を称える事になる所から、
「ひゃくまんべん」と呼ばれる様になったのでしょう。 こう言う呼び方の外に「夏祈祷」「土用祈祷」また 「虫送り」などと呼ばれていますが、 これは昔から夏に患うと暑さで体力を消耗し長患いになる事が多かったので、暑さ厳しくなる土用の入りに、健康で夏を乗り切れる様に、 また植えた米や野菜などの作物が、 夏の間に病害虫にかからずに秋に豊作を迎える事が出来る様にと願いを込めて、田の周りを鐘と太鼓のお囃子で巡って祈ったと言われています。
昔から伝わるさまざまな行事が物の豊かさや又は高齢化 等から、
簡素化し省略されていく現代ですが、行事を通じて守られた地域の連帯感や思いやりの心と言うものは一度捨ててしまえば、
取り戻すのに倍の労力が掛かるものだと思いますので、
種々の行事が続けられる地域であって欲しいと思います。
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